小説版退付喪霊 音音 第11話     

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  そうしてあっという間に最後の修行の日
がやってきたんだよ。 
「今日は、最後の修行を行います。」 
 修行の後の勉強会でならっていたのは、
この世は世界(人界)、魔界、神界の三つで
構成されていてそれがそれぞれ干渉しあっ
ている事。
 世界と魔界との境界は厚いが極端に境界
が曖昧な場所が出現して、そこから悪魔や
強力な魔の力そのものが流れ込み魔力に侵
された生き物や物が悪魔に変異するなどが
起こりそういった「曖昧な地域」は人外魔
境と呼ばれ忌避されていたんだそうな。
 百目鬼が封印されていた場所がまさに
「曖昧な地域」であり、百目鬼自体が封印
の一部であったことや、百目鬼の封印が祠
を壊したことで解かれ、魔界と人界の均衡
が崩れつつあることを学んでいたんだよ。
 神界と人界は直接関わりを持たないが、
境界の薄い地域はある。そこでは神からの
教えを忠実に守る神の救いを求めるものた
ちが集まり小さな町をつくっていたんだよ。
 そこには神の声を聞くことができるとさ
れる巫女を最上位にした階級社会で生活を
していたんだよ。 
「それはおーらとも呼ぶ。今日は生き物や
物が放つ気を感じる修行をします。これは、
本当に才能による部分が多く気を感じる事
ができるのは人間では極一部になるんです
よ。だから感じられなかったと言って悲観
することは何もないのです。」 
 いきなり駄目な方向から言われたため、
音羽はちょっと不安に感じながら言葉を紡
いだよ。 
「どうすれば感じられるんですか?」 
「考えてもだめです。ただただ感じるの
です。そうですね、自然と自分とが一体化
していると想像し、自分の気(おーら)の様
に外の気(おーら)を捉えるのです。」 
 考えても駄目、と言いつつかなり具体的
な助言をもらったので、音羽はかなり気が
楽になりスッと体の力が抜け、途端に周り
の林の音が鮮明に聞こえる様になったんだ。
 心地よさに目を閉じ、さらに立ちながら、
まどろんでいる様な状態になったよ。 
 そうして、しばらくすると・・・・・・ 
「ふふふ、ふふふ、ふふふ。」 
 と女の子の笑い声の様な音が聞こえ、驚
いて目を開けたんだ。 
「どうしたのですか?何か感じられたので
すか?」 
「いや、女の子の声が・・・・しませんで
した?」 
「ああ、それはたぶん風の精霊の声ですね。
 良かった貴方、どうやら気を感じる能力
がある様です。 
 精霊は、強い気そのものが意志を持ち仮
の実体を持った状態なのです。要するに気
の塊だからそれを感じられるという事は、
気を感じる事が可能なのですよ。周りの微
弱な気も感じる様に感覚を研ぎ澄ましてみ
なさいな。」 
 そう言われ、さらに続けると目を閉じて
いるのに、周りがぼんやり見えている様な
感覚に囚われたよ。 
「コイさん、感じられたかもしれません。」 
「そうですか、これは本当に感じられたか
否かは本人にしかわからないのですよ」
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監修 赤い羽根のCB    
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