小説版退付喪霊 音音 第10話     

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 「さて、音羽さんは戦いから生き残るのに大
 事な事はなんだと思いますか?」 
「うーん、強くなる事、ですかねぇ?」 
「違いますね、いくら強くなってもそれより
 も強い者が現れたり、運が悪けば死んでし
 まいます。」 
「じゃあ、どうすれば良いのでしょう?」 
「戦わない事です。」 
「まあ、それはそうですね。」 
「大事な事ですよ。それは、別としてもう一
 つはいかに体調を維持するか、もあります。
 今日は緊急手段として回復の力をお見せし
 ておきましょう。」 
「おぉ、凄いですね。」 
「いくつか方法がありますが・・・」 
 そう言うとコイは刃物で軽く自分の手の平
を傷つけたよ。 
 そこから血が流れている。 
「治癒の基本はあるべき姿に戻す事です。今
 私の血管は切れるべき血の流れが損なわれ
 ています。これを戻す想像を持ち・・・・
 」 
 コイは傷を見つめて呪文を唱えたよ。 
「傷よ!治れ!!」 
 声と共に瞬く間に傷が癒えたよ。 
「治癒は、失った血液までは回復しないんで
 す。貴方がより強い魔力を持つまでは高い
 力の治癒は無理です。 
 それでも、回復の力は役立つから無駄には
 なりませんよ。」 
 私にできるんだろうか?音羽は疑問に思っ
たよ。 
「ちょっとかわいそうですが修行はこれでや
 りますよ。」 
 そう言ってコイは近くの桜の木の枝を折っ
たんだ。 
「この桜の木の枝を元に戻すのが、今はちょ
 うど良い修行になるはずです。後で魔の力
 の訓練もするから十回ほどやってみて下さ
 い。」 
管束が真直ぐになり細胞が水で満たされる状
態を想像した。 
「桜の枝よ!治れ!」 
 そう唱えると、桜の枝が元に戻り心なしか
花がつややかになった様に見えたんだ。
 だがつややかになったのはほんの一瞬だっ
たんだよ。
 また枝は丁度中央からポキリと折れてしま
ったんだよ。 
「今はこんなものですね・・・続けて修行し
 なさい。」 
「わかりました。」 
 回復の力は、かなりの修行をしないと習得
できないものだったんだよ。 
 音羽は想像する力が桁外れである事に気付
いたため、駄目元で教えてみたのだが、最後
まで音羽自身を治癒することは出来ても自分
以外はいくらやっても治療することができな
かったんだ。 
 そうして他の属性の魔法も練習したけど、
火と風の属性の魔力しか音羽には身につかな
かったんだよ。 
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監修 赤い羽根のCB    
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