名前をコイと名乗るその女性は近くの茶屋 に音羽を誘ったのさ。 こいの柔らかな物腰や雰囲気にすっかり音 羽は安心しきって、涙ながらに訴えたんだ。 コイは口を挟む事無く音羽が言い終わるま でうんうん頷いて聞いていたのさ。 すっかり思いの丈を吐き出した音羽にこい は語りかけたよ。 「とてもつらい思いをしてきたのですね。心 中お察しします。やはりあななたち家族は百 目鬼という厄介な妖怪に魅入られているよう ですね。」 「先ほどもおっしゃっていましたが、妖怪で すか?」 音羽が不思議そうに尋ねた。それにコイは 言葉を続ける。 「はい・・・貴方のお兄様方は百目鬼という 妖怪に魅入られて虜にされてしまったのです よ。 畑を耕すために貴方たち兄弟が耕したあの 丘は、昔昔百目鬼を封印した祠がある場所な のです。貴方のお兄様はあの祠を開拓の為に 破壊してしまったのです」 コイの話によると百目鬼という妖怪が封印 されている祠を壊した為に、百目鬼は封印か ら解き放たれてしまい本体も妖力も元に戻っ てしまったんだそうな。 そこで目を付けたのが封印を解いてくれた 命の恩人の吉國家の長男だったんだ。 コイは更に言葉を続けたよ。 「百目鬼は悪気がないからたちが悪いです。 封印を解いてくれた恩人である貴方のお兄様 方と楽しく遊んでいるつもりなんです。しか し妖怪の遊ぶと我々人間の遊ぶは時間の長さ が違います。このままだとお兄さんたちは死 ぬまで遊ばれてしまいますよ。」 「それは困ります!何か方法はないのでしょ うか?」 音羽は慌てた様子で大声を上げたんだ。 先ほどとは打って変わり、どこか面白げな 視線をコイは音羽に投げかけたよ。 「人間でもそういうモノに聡い者はいるので すね。」 コイは目を細めたよ。 「あなたには素質があります。その気になれ ば悪妖怪たちを封印できる天性の素質がね。」 「私にそんな力があるのですか?」 音羽はゴクリと息を呑んだんだ。何も知ら ない無知な自分にそんな力があるのかと音羽 は不思議に思ったんだねぇ。 「貴方はお兄様たちを助けたいと思いますか?」 「はい!それはもちろんです!」 音羽は真剣な面持ちで大きくうなずいたよ。 「あなたの心意気は良く分かりました。明日 の丑三つ時にまたこの神社にいらっしゃい。」 「分かりました!私がんばります!」 |