小説版退付喪霊 音音 第2話     

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 音音や。良くお聞き。これから話す話は、
音音にとってとても大切な話なんだよ。私た
ちと妖怪たちの深い因縁の話さ。

 昔々の話。江戸時代より前の話だよ。
 ここ真岡はもちろんのこと芳賀町一体も恐
ろしい妖怪たちが暴れまわる無法地帯だった
んだよ。

 ここで悪さを働いていた妖怪たちの親分は
百々目鬼(どどめき)と言ってね、姿形は普
通の人間のように見えるが袖を捲し上げると
腕には無数の目が存在している妖怪なんだ。

 肩から手の甲にかけて、両腕とも鳥の目の
ような形の赤い目玉がびっしりと張り付いて
いてとても気味が悪いんだよ。

 おまけにその無数の目が、まるで生き物の
ようにまばたきをするので、見ている方とし
ては不気味なことこの上ない。その眼で人間
をたぶらかすんだよ。

 百々目鬼の周りには何故なのか強力な大妖
怪たちが集まっていてね。

 酒呑童子(鬼)、玉藻前(白面金毛九尾の
狐)大天狗は日本三大悪妖怪といわれている
んほどなんだ。

 そして月日は流れて徳川家が日本を治める
時代となった頃だよ。

 吉國家は代々不思議な力を受け継いでる家
系でね、そのきっかけになった初めの人の名
は吉國音羽(おとは)と言うんだ。

 その頃の吉國家は芳賀の大きな地主だった
んだよ。農民と一緒に田畑を広げて豊かな実
りの土地で有名だったんだ。

 音羽は吉國太郎左衛門義信(たろうざえも
んよしのぶ)の娘でね。兄弟は兄が3人の姉
が3人居る末っ子で、とても心が優しくて、
誰にでも平等でまさかそんな強力な力を持つ
とは本人も思っていなかったんだよ。

 ここで百々目鬼と吉國家の恐ろしい因縁が
始まるんだよ。

 百々目鬼は平安時代に宇都宮の辺りで捕ま
りて一度芳賀の地に封印されていたのだが不
幸なことに音羽の兄によってその封印が解か
れてしまったんだ。

 兄は新しい田んぼを作るために指示して古
い祠を撤去させたんだよ。なんせ平安時代の
ものだから、まさかそんな妖怪が封印されて
るとは誰も思わないだろう。

 長男は働き者でね、田畑を朝から晩まで見
まわったり農民に指示して土地を改良させた
りと自分自身も泥にまみれて働いていたんだ
よ。

 何故か祠を壊してから作物がまったく育た
ないんだ。ある日、不思議に思って田畑を見
まわりながら首を傾げていると、色白の年は
十四歳を過ぎたころかねぇ。なかなかの美し
い女の子が微笑みながら長男の前に現れたん
だよ。

 その娘が言うには「貴方は私を助けてくれ
た命の恩人です。あなたにお礼がしたくてや
ってきました。」

 助けたと言われても身に覚えが無く、女の
うわさが無い程堅物でまじめな男だったのだ
が可愛らしい娘に美しい声で囁かれたんだか
らたまったもんじゃない。イチコロさ。
その日から長男は変わってしまったのさ。
百々目鬼に虜(とりこ)にされてしまったん
だよ。
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監修 赤い羽根のCB    
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