小説版退付喪霊 音音 第14話     

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  決戦の日はそれからすぐにやってきたよ。 
 百目鬼が封じられていた祠へ向かうとそこ
には百目鬼が待っていたかのように顔を着物
の袖で隠して立っていたよ。 
「今のあなたなら大丈夫です。」 
 コイが音羽に声を掛ける。音羽は頷くと百
目鬼の元に一歩ずつ近づいて行ったよ。 
「ふふふふ」 
 百目鬼は不気味に笑い顔を隠したままだっ
た。声だけ響いていたよ。 

 突然百目鬼が顔を隠していた手を下したん
だ。音羽は身構えて様子を伺っていた。 
「ひっ・・・!」 
 百目鬼の顔を見て、音羽は驚いた。 
「汝は我・・・・我は汝」 
 百目鬼の顔は音羽とうり二つになっていた
んだ。そして語りかける声も音羽そのものだ
ったんだよ。 
 音羽の姿をした百目鬼は不気味に笑いなが
ら言葉をつづけたよ。 
『百姓?毎日働く? そんな束縛まっぴらな
のよ!』 
『あそこの娘は働かなくてもよくて腹が立
つ』 
『うちの娘は口減らしの為に売らなければい
けないのに』 
『だいたい私たちが働いているから良いくら
しができるんじゃないか』 
『憎い!!吉国家が憎い!!!』 
「や……やめて……!!!」 
 村人たちの陰口と百目鬼の声が辺り一面に
響き渡ったよ。 
 コイはというと少し後ろからそれを見守り
対峙していたのさ。 
「音羽さん……負けてはいけません」 
 そうつぶやくと暗い顔で音羽を見つめてい
たよ。 
 そんな中、百目鬼は話を続ける。 
『生き方……死ぬまで何から何まで全て決め
られてる! あーやだ!嫌だ!。伝統?誇り?
そんなのクソ食らえよ! あんな百姓稼業は
潰れれば良い!そうすれば村人も解放される!
 私はモノじゃないんだから!……それがホン
ネよ。ねえ?……もう一人の私』 
「ち……違う……違うッ! あなたなんか…-」
 百目鬼の言葉を聞いて音羽は、泣きそうだ
ったよ。そしてそれを否定しようとしたのさ。 
「言うな!言ってはなりません!」 
 コイは急いで声を上げるが間に合わなかっ
たのさ。 
「あなたなんか! 私じゃないッ!」 
 その言葉が引き金となり、百目鬼からから
黒い霧の様なものが溢れ出てきたのさ。 
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監修 赤い羽根のCB    
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